PSO エピソード ウサムク/第7話

+-+-+ それぞれの休日「後編」 +-+-+

−シグ山脈

 ギブルスに追いつめられ、絶体絶命だった4人の前に突如現れたフォースはDGの館の館主、カミオフだった。高等テクニックである闇の呪法「メギド」を唱え、ギブルスを一蹴したカミオフは、優しい笑みを浮かべてウサムクたちに話しかける。

「フォフォフォ…、危ないところじゃったな」
「うう、じいさんあんがちょ」
「助かったぜカミじい!!」
「うむうむ」
「しかし、カミオフ様、なぜ私たちの様子がわかったのですか?」
「あ〜、レイド、お主の背中にの…あ〜あれじゃ…その」
「あー!! レイドたんの背中に『はっしんき』っていうお札が貼ってあるよ!!」
「ほ、ほんとですぅ〜!!」
「…な、なに!」
「(ってかおまえさんたちバカじゃろ…)ふぉふぉふぉ、そういうことじゃよ。まだまだお主たちは未熟が故、心配での…。少々甘やかしすぎかと思ったのじゃがの」
「そんなことないよーじいちゃん。超助かったよ〜!!」
「そうかそうか、それはよかったの。でものー、あのメギトというテクニックは成功率が低くての、成功してよかったわい。ふぉふぉふぉ」
「え〜! 超こわいんですけど」
「じいさん冗談は顔だけにしてくれよー」
「…うむむ、しかし何はともあれ助かりました。まさかこんな所にあのような野獣が潜んでいるとは思いもよりませんでした」
「うむ、見た目だけで判断してはいけないということじゃな。ハンターたる物、あらゆる情報からその場の状況を判断せにゃならん。少しばかり強くなったからといって、奢れる者はなんとやらじゃよ…」
「…すいません。しかし、これ以上、師匠にお力をお借りするのも申し訳ございません」
「うむ。はっしんきのお札はここで取っておくかの。での、わしじゃが、お主たちに一つ助言をしようと思っての」
「ジョゲーン!?」
「(やっぱバカじゃの)うむ。お主たちが探しているアルルンという者はの、実は大賢者と呼ばれるほどの達者なお人での。もし会えたならば、お主たちに様々な助言をしてくれるじゃろーよ」
「なるほど…」
「まー、この様子だと、お前たちの後ろにある洞窟なんか、怪しいんじゃないのかえ?」

 カミオフ師が指さす場所は、シグ山脈の頂上付近に空く大きな洞窟だった。

「ほんとらー、気がつかなかったよー」
「じゃー行ってみようよ」
「そーですねー」
「うむうむ、ではわしは少々ハッスルしすぎて腰が痛いから帰るのじゃ」

 というと、カミオフが現れた場所に魔法陣が浮かび、カミオフ師は再びDGの館へ帰っていった。

「では参ろうか…」

 ウサムクたちは洞窟の入り口に立っていた。そこは閑散としたシグ山脈の風景とうってかわり、華麗な花々たちが咲き乱れる不思議な空間だった。

「なんか変なの〜」
「だねー、ここだけ花がいっぱい咲いてるよ〜」
「そうですね〜。あっあんなところに虹色ラッピさんがいますよー」

 モーリスが指さす草むらに一匹の虹色ラッピーがモゴモゴ動いていた。

「微笑ましいな…」
「こばにゃ〜!!」
「!!」
「ラッピさんがしゃべりました〜!」
「ひ、ひえ〜」
「アタシはラッピーじゃないよー。あるるんっていいます。も一度こばにゃ〜!!」
「え、あるるん…さん?」
「やりましたー、チェーコさんのお嫁さんを発見ですぅ〜!!」
「あらま、あんたたち旦那と会ったのかにゃ?」
「…というか、旦那さんにあなたを探すように頼まれたのですよ」
「ふーん。旦那がね〜。(ってことはついに見つかったのか…)」
「じゃ、帰ろうぜ! 旦那さんのとこへ」
「いやいや、あんたたち、実はね旦那にはこの前ここにいるよって、伝書バトを飛ばしたばかりだから大丈夫よ(ウソだけど)。それよりみんな、あたしについてきなさい」

 と言うと、あるるんは洞窟の中に入っていった。あるるんの後にしぶしぶ付いていく4人。洞窟の中は意外にも暖かく、そして人工的な作りとなっていた。いくつもの蝋燭が照明となり、洞窟の最後部にはなにやら祭壇らしき物がある。そしてあちらこちらに散らばる魔導書の数々。4人はすぐに、ここはあるるんの研究場所だったという事実に気づいた。

「んふー。とまーこんな感じ。みんなをね、だますつもりは無かったのよ、アタシも旦那も」
「…では、お聞きしたいのだが、あるるん殿は大賢者と呼ばれるほどのテクニック使いなのですよね。そのあなたが、私たちのような、しがないハンターたちに何の用がおありで…?」
「質問が2つだにゃー。まずは1つめ〜。アタシは別に大賢者なんて名乗っていないよ。シップの連中が勝手に呼んでるだけ(まー強いけどねん♪)。2つめは、あなたたちがここに呼ばれた理由。それはシップに貼ってあった不視の印紙を見ることができたということ。そして、旦那があなたたちの素質を見抜いたからよ」
「フシノインシ? あーお嫁さんを探してくださいっていうポスターのことかぁ」
「へぇー。アタイたちなんかスゴイじゃん」
「感激ですぅ〜」
「…まさかそんなことに。しかし兄者は何も話してくれなかったが…」
「そりゃそうよ、いかに実の弟でも言えることと、言えないことってあるでしょ? このねー不視の印紙の試練は、限られた純粋な心を持つハンターじゃないと受けることができないの。ようするにメセタ目当てや不純な動機でハンターやってる人たちには、見ることすらできないってわけ。まー他にも色々条件があるんだけど…そうだな1000人に一人ぐらいかな、見ることのできる人は。さらにそこから旦那のチェックが入るからねー…。んまー、一応私のところにまでこれたでしょ! これたってことはアレよ!」
「アレ…?」
「選ばれたのよ、リコの神託を受ける者に」
「えー、リコの神託!?」
「あら、あなたたち知らないの? リコ=タイレル」
「そりゃー知ってるけどー、あんなのおとぎ話だろー」
「そうですよー、真っ赤な衣服に実を包んだ一人のハンターさんのお話ですよね」
「きーー、違うのよ。本当にいたんだから。っていうかいるはずなのまだ!!」
「…それは本当か? どうにも話が唐突すぎて何が何だかわからないのだが…」
「んー。じゃあ順を追って、それとリコの神託とは何かを説明するよ。」

 というとあるるんは説明を始めた。

「…まず、ウサムク、マクガ、モーリス、レイドは昔からラグオルに伝わる、聖なる心を持つ者を選ぶ不視の印紙を見ることができたわ。そして、戦士としての資質も旦那に認められた。いかに2つの事柄が大変か、もしくは運命によるものかは、大体わかっているわよね。
 そしてその選ばれし者たちはリコの神託を受けることができるの。リコ=タイレルはおとぎ話の世界の人物ではないわ。実際に数十年前にこのラグオルを冒険した一人のハンター。そして今、ラグオルに起こっている現象と深く関わっている者。起こっている現象というのは、ラグオルに現れた異常なエネミーたちと、数年前に起こったセントラルドームを起点とした大爆発のことね。そしてリコの行方はまだわからないまま…。
 でもね、リコを感じることができる人がいるの。そう、それがアタシ。リコの思念を受けて、彼女が何を見たのか? そしてこのラグオルで何が起こったのか? あなたたち4人が導かれる運命のベクトルは何か? それらをリコが教えてくれる。」

「う〜ん、わかったようなわかんないよーな」
「アタイは半分もわかんなかったよ」
「難しい話ですね〜」
「…ようは、我々は選ばれた者と。そしてリコに会うために旅をしなければならないということか」
「そそ、大当たりだわよ。レイドちゃん。じゃさっそく神託を始めますかね。何を言うかはアタシには分からないけど、しっかり聞くのよ」

というと、あるるんは一枚の大きなシルクの布を頭に被り、瞑想を始めた。
−深い沈黙…。そして青白い思念体が空中に浮かび、リコの姿を作り出す。

…は〜い♪ リコでーす。ひっさしぶりにお話できるわー。っとと、私が呼び出されたってことは、ついに見つかったのねん。…ふむふむ、キミたちが選ばれたハンターたちってわけか。

「へ〜ん、この人がリコたんか?」
「…話には聞いていたが、お初にお目にかかる」

…よろしっくー!! えーっと、まず私から言えることは1つよ。あるるんが言っていた3つのうち私が見たことと、ラグオルで何が起こったのかは自分たちの目で確かめなさい。じゃーいくわよ♪ ずばりあなたちの定められた運命とは! むむむ…。って名前教えなさいよあなたたち。

「ウサムクで〜す」
「アタイはマクガってんだよ」
「モーリスですぅ」
「レイドと申す」

…ふんふん。うーん、ちょっと聞いてみるわね、運命を司る時の流れに…。ふむふむ、なるなる、ほどほど。よっしゃ、わかったわよ。
 まずはモーリスちゃん! あなたはすべての物の意味を信じて生きなさい。なぜその物が世界に存在するのか、そしてそれがどこへ行くのか? 理は「Meaning」よ。
 次にマクガちゃん。あなたは心がとても純粋だわ。そして色々な人の心の声を聴くことができる。あらゆる物の心を聴いて、他の人へ伝えてあげて。 理は「Mind」よ。
 ウサムクちゃん。あなたは満点の大空の如く広くすべてを受け入れる力を持つわ。すべてを受け入れ、すべてを染める。大きな力だけれど、みんなが幸せになれるようにその力を使ってね。理は「Universe」よ。
 最後にレイドちゃん。あなたは、自分の持つ力であらゆるものを切り開き前へ進んでいける力を持つわ。例え災いが万物に現れようと、切り開く力で幸せを呼ぶことが出来る。理は「Luck」だわ。
 …はい以上。よくわかんなかったと思うけど、なにか迷ったときは私の言葉を思い出してね。よろしくよん。…ふー、あらら、そろそろまた私の心は閉ざされてしまうみたい。次に会える時を楽しみにしてるわよー。じゃーねん。

「う、ううん」
「あるるん殿が目を覚まされた」
「どうだったかにゃ? 何か聞くことはできたかな。リコさんから?」
「アタイはよくわかんなかったけど、なんか気持ちがすっきりしたよ」
「私なんか星空だってー。わけわかんないよ」
「私なんて意味ですよー、意味なんて食べられませんよー」
「ぎゃははは、まあまあいいんじゃないかなー。きっとわかる日もくるよ」
「…そうかもしれないな」
「じゃあ、旦那には無事神託が終わったことを伝えておくからね。あー、そうだこれからどこへ行こうとしてるの?」
「え〜、全然決めてないしー」
「ふーん。じゃーラグオルの洞窟へ行くといいかもしれないねー。あそこは元々、自然の大穴だったんだけど、最近じゃ人の手も入ってねー。奥深くにはまだまだエネミーがいるらしいけど、丁度今のあんたたちの腕前なら太刀打ちできるんじゃないかにゃ」
「うは〜洞窟ですって。洞窟って暗いんですよね」
「んなことしらねーよ。まーいってみようぜ」
「そうだそうだ! よっしゃーがんばっていこー!」
「また腕を上げねばならんな…」
「うんうん、じゃあーみんながんばってにゃ〜!!」

 ウサムクたちは、休日を取るはずであったが、思わぬことから大きな運命の輪に取り込まれることとなった。まだそんな自覚は本人たちにないものの、世界は動き出している。
 お気楽4人組は洞窟へ向かったのだった。

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